代表的なものとしてA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎があります。
(A型肝炎)
糞便経口感染をします。すなわち、不衛生な地域で感染が多い傾向があります。
また、日本のような環境下でも、ウイルスに汚染された水や野菜、カキ等が原因で感染することがあります。
感染した場合、風邪のような症状に続いて黄疸が出ます。
医療機関を受診なさる方の大部分はこの時点になります。
血液検査では肝機能の数値(GOTやGPT)がかなりの数値に上昇していて、ほとんどの場合入院加療になります。
ただ、A型肝炎であることが確定した場合、特異的な治療があるのではなく、安静のための入院になります。
A型肝炎は感染後、強い免疫ができるので、2度罹患することはありませんし、慢性化して肝硬変などに至ることもありません。
(B型肝炎)
A型肝炎と異なり、急性肝炎で終わるものの他、少数ではありますが慢性肝炎に移行するものがあります。
感染経路は、以前は予防注射における針の使い回しがありましたが(係争事例があることはよく知られています)、現在そうしたことは行われておらず、あるとすれば覚醒剤などの非合法的な注射が行われる場合です。
現在、感染の主な経路は性行為であると考えられます。
慢性B型肝炎の大部分は、母子感染によるものです。
お母さんが慢性にB型肝炎ウイルスを持っている場合、出産の際に赤ちゃんが感染を起こすことが多いのです。
赤ちゃんは、免疫機能が未完成であるため、進入してきたウイルスを『異物』と認識せず排除しません。そのためにB型肝炎ウイルスがいついてしまい、『キャリア』と言われる状態になります。
現在は、こうした出産の場合の対策も講じられており、たとえB型肝炎をお持ちの方でも安心して出産できるようになっています。
B型の慢性肝炎については、いろいろな検査でその治療方針が決定され、インターフェロンや抗ウイルス剤による治療が行われています。
(C型肝炎)
ほとんどの場合慢性化し、肝硬変、そして肝がんの発生に繋がる原因になります。
感染力はA型やB型と比較して弱いのですが、一旦感染した場合に慢性化することが問題なのです(極論すれば、極希に見られるB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を除き、急性肝炎は完全に治るわけで、あまり恐れなくてよいのです)。
感染経路は、ほとんどの場合血液を介したもので、日常生活の中や性行為で感染することは希です(ただし、ゼロではないので注意は必要です)。
治療はインターフェロンや抗ウイルス剤が用いられます。
この数年で治療成績も飛躍的に向上し、またインターフェロンも副作用の少ないものになっています。
特に、抗ウイルス剤に関しては、驚くほどの効果があり、本当にあっけなく(と言っていいほど)ウイルスが消失します。
その後、継続的にウイルスが消えている状態が保たれているかの血液検査や超音波検査は必要ですが、C型肝炎が『稀な疾患』になる日も遠くないようです。
以上、代表的なウイルス肝炎について述べましたが、いずれにしてもまずは感染の有無を知らなければいけません。
出産なさった方や、献血をなさった方は、そうした点を間違いなくチェックされています。
一方、一般的な健診では肝機能障害の有無までは確認できても、その原因まではチェックされていません。 ですから健診などで肝機能障害の指摘を受けた方は、こうしたウイルスに関する検査や、超音波検査を是非受けて頂きたいと考えています。